トップ>文化

 最近、ゆったり心を落ち着かせて読書をしたのはいつのことだろうか?中国のネット上で注目を集めているこの話題を見て、「いろんな理由が重なり、読書のための時間なんてほとんど取れていない」と、少しがっかりした気持ちになる人もいるだろう。

 「ネット小説なら夜通し読めるが、名著となるとパラパラとめくっただけでも、内容が全然頭に入って来なくなる。高校生の時のように、落ち着いた気持ちはもう完全になくなってしまった」という人もいれば、「できるだけたくさんの本を読むのはいいことと分かってはいるものの、なかなかストイックになれない」という人もいるだろう。


空いた時間はどこへ?


微信图片_20210427083128.jpg

 「ショート動画を見たり、スマホをいじったりし始めると、止まらなくなり、いつの間にか時間が過ぎている」。そう話す80後(1980年代生まれ)の李有さん(仮名)は、持っている本数冊もほこりをかぶっている状態になっていて、その悪い習慣がどうしても直せないため、仕方なくショート動画アプリを削除した。それでも、またインストールして、削除するということを3度も繰り返したという。

 ゲーム、街へお出かけ、会食など、読書の時間がない理由はたくさんあるだろう。頭を働かせて、じっくり考える必要のある読書と比べると、他のレクリエーションはもっと気軽で、リラックスできると感じるものだ。

読書の足かせになる浮ついた気持ち

 李さんのように、ほとんどの人は、読書の重要性を理解してはいるものの、誰もが1冊の本を最初から最後までゆっくり読める時間を取ることができるわけではない。

微信图片_20210427083346.jpg

資料写真:世界読書デーだった4月23日、雲南省昆明市の地下鉄の中で、スマホで遊ぶ時間を減らし、

本を読むように呼び掛ける読書フラッシュモブを行う約20人のボランティア(撮影・任東)。

 あるネットユーザーは、「大学生になってから、1年と2年の時は図書館に行って本を借りて読み、夏休みや冬休みには本を数冊借りて帰省していた。でも、3年、4年になると、落ち着いて本を読むことはなくなってしまった。忙しいとはいっても、何をするのに忙しかったのかよく分からない。図書館に行って読書するよりも、寮のベッドに寝転んで、スマホで遊ぶほうがいいと感じていたような気がする」と振り返っている。

 また、「買った本は積み上げるだけで、実店舗書店にも長らく行っていない。自分にとって、本はコレクションみたいなもので、欲しいけど、開いて読むことはほとんどない。自分たちの世代の人が変わってしまったのか、世界全体が変わってしまったのか、よく分からないけど」といった声を寄せる人もいる。

受け取る断片化された情報はどんどん増える一方、落ち着いて何かをする時間はどんどん減っている。中には、「無理やりにでも本を読もうとするものの、浮ついた気持ちを抑えることができない」と感じている人もいる。

本を読みたいという気持ちは心に根ざしているもの

 しかし、スマホやショート動画は、よりたくさんの時間つぶしの方法を提供してくれているものの、落ち着いて読書できない理由にはならないはずだ。本当に読書が好きな人は、いつでもどこでも、「図書館」にいるような気持ちで本を読むことができるものだ。

 例えば、2018年からリリースされている大ヒットミニドキュメンタリー「地鉄上的読書人」は、ある図書編集者・朱利偉さんが、普段利用する地下鉄のなかで本を読む人を写真で記録したことに端を発している。

 2018年から今に至るまで、写真1600枚以上を撮影しているという朱さんは、「3年の間に、2回以上見かけた人が数十人いる。それらの人は、見かけるたびに読んでいる本が変わっていた。自分の世界で自分磨きをしている人が今でもいるのだと感じる」と話す。

 そして、「スマホで遊んだり、動画を見たりしている人もたくさんいるが、電子書籍を読んだり、単語を覚えたりしている人もいる。なかには饅頭(蒸しパン)や食用油を片手に持ち、もう片方の手で本を持っているという人もいる。食べ物が暮らしにおける必需品であるように、本もまた暮らしの一部」との見方を示す。

さらに、「インターネットの情報やショート動画は、表面的な力を与えてくれるかもしれない。一方、本を読みたいという願いは心に根ざしていて、その素晴らしさは少しずつ分かってくるものだ。読書が好きな人は、どこにいても時間を取って読む」と話す。

どのようにスマホに時間を奪われる現状を打破するか?

 朱さんは、「『ゆったり読書』が話題になり、多くの人の間で話題となっていることを、角度を変えて見ると、いろいろなものが入り乱れた情報の陰で、『何が問題かは分かっているのに、克服の仕方が分からない』という、多くの人の困惑が見え隠れする」と分析する。

 テンポの速い現代社会において、画像や動画がダイレクトなビジュアル的、聴覚的刺激を与えてくれる。一方で「ゆったりとしたリズム」の読書が、大して役には立たないが捨てるには惜しいものになっている。「読書の意義って一体何なのだろう?」という疑問が、一瞬頭をよぎったことがあるという人も多いだろう。

 最近、中国のネット上で、「涙なしには読めない」と話題になった黄国平さんの論文の「謝辞」における「勉強を続けて、山から出て、この一生を無駄にはしない」という言葉がその答えだ言えるかもしれない。

微信图片_20210427083721.jpg

北京の繁華街・西単にある人気書店「鐘書閣」で読書する人(撮影・田雨昊)。

 また学者の周国平氏が言及しているように、若者たちには、著名人の名言を断片的に見るのではなく、お気に入りの本を1冊1冊、系統的に読んでほしい。

 今の若者は、しっかりとした基礎を築くことが特に大切だ。基礎がないなら、インターネットから悪い影響を受けてしまう。一方、基礎がしっかりしていれば、インターネットは良いアイテムとなるだろう。

 あるネットユーザーは、「読書は、世界に目を向ける一番良いチャンネルで、困惑した気持ちを解消する一番良い方法でもある。読む本が多くなればなるほど、自分がどんな人になりたいのか、どんな人生を送りたいのかもますますはっきりしてくる」とまとめている。

作者:編集:崔煜

関連ニュース